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それでもおれは歌には人を元気にする力があると思っている

そのときおれは深夜の住宅街を携帯で話しながら歩いている最中だった。

(@盆@)「…ま、世の中いろいろあるさ。元気をだせよ。じゃあいまからおれが絶対元気になるとっておきの歌を歌ってやるからさ」



(@盆@)〜♪「ぱっぱっしゅーる!ぱっぱっぱしゅーる!ぱっぱっりーろぱっぱっぱっりーる!ウォ〜!げーんきーをーだーせーよーお前らしくーふるまってー♪のーどまーできーてーるー言葉そのままーだーしてー♪疲れ知らずにいーたーあーのー時をー♪隠さなくてもいーさー♪STILL NOW〜!拳を振り上げてー♪ぱっぱっしゅーる!ぱっぱっぱしゅーる!思い切り叫んでー♪ぱっぱっしゅーる!ぱっぱっぱしゅーる!」


(@盆@)エヘヘ「どうだ?元気でたか?」


(@盆@)!!「……ええっ!?知らないのこの曲?うそでしょ?だっておれたち同年代じゃん?三十代じゃん?…えっ?なんとなく聞いたことある?ウッチャンナンチャンの番組で使われてたじゃん?おれたちの世代の青春の曲じゃん?80年代じゃん?バンドブームじゃん?…ええーっ!知らないの!?おれこんな真夜中の住宅街で大声で歌ってんのに。新聞配達の兄ちゃんに不審な目で見られたのに。知らないの?マジで?…うわ〜。お前なんか一生落ち込んでろっ!死ねー!」


結局、大事MANブラザーズバンドなら知ってるというので「それが大事」を歌いました。(終)


【再掲】それでもおれは歌には人を元気にする力があると思っている(初出2008年1月24日)

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Omnia ad majorem Dei gloriam

「あんた。裏の仕事だけじゃなく、表の仕事もしいや」

胡座をかいてぼんやりと座っているおれに魔女がそう言った。

「そうや!あんた介護の仕事しいや。福祉の仕事や。年寄りとか障害者とか。いま、あたしの中に突然降りてきたわ。うん、そうや。あんたは介護の仕事をするべきや」

「介護?福祉?おれが?」

「これは上からの言葉や。上がそうゆうとる。あたしも賛成や。あんた向いとるもん。あんたに介護されたら、年寄りみんな涙流して喜ぶで。あんたがさわってあげるだけで年寄りみんな喜ぶ。だいたいな、あんたな、このまま放っといたらホームレスにでもなってまうやろ。なんもせんと毎日毎日猫抱いてボケッとして。それはあかん。あんたはそんなんなっても幸せなんはわかるけど、あたしは反対や。それは社会にとって損失やからや。世の中にとってそれは損失なのや。あんたはこの世のために働かなあかん。あんたのおっしょはんもゆうてたんやろ?あんたはひとりでいるな人と交われって。だからあんた、介護の仕事をしいや」

「そっか。じゃあやる」

「…あんた、えらいあっさり簡単に決めたなあ。まあええわ。あたしが資格取る学校探してあげるから、そこに通ってまずは資格を取りや」


そんなやり取りがあったのは去年の311の震災が起こる少し前のことだ。このことがきっかけで現在のおれは介護の仕事をやっている。とある場所のとある施設で名もない介護士として働いている。

おれは人生の選択をそんな風にえらいあっさり簡単に決めた。悩まないし迷うこともない。そもそも自分で考えてすらいない。おれはこの年になってやっと「絶対他力」「他力本願」というものがなんなのかを本当の意味で理解した。すべては神の思し召しだ。Let it beなのだ。阿弥陀如来でもアラーでもヤハウェでも呼び方は何でもいい、大いなる意識の源、グレイトスピリッツの存在に触れることによって初めて理解できる生き方なのだ。

どこでなにをやるかなんてどうでもいい。そんなことは重要じゃない。大事なことは「自分はどうあるか」だ。おれはただ、泥の中で、砂漠で、コンクリートの上で、白い大きな蓮の花として咲いていればいい。いまこの瞬間に生きるだけでいい。簡単だ。ただそれだけだ。


そのとき以来、おれのこころの奥の方にある呪文みたいな言葉が浮かんだ。なんだろう?と最初は思った。外国の言葉だ。なつかしい言葉だ。とても大事な言葉のような気がした。そして突然、思い出した。


Omnia ad majorem Dei gloriam


それはラテン語だった。そうだった。数百年も前の昔のおれはこの言葉と共に生きたのだった。そして船に乗り、海を越え、未開の土地へ向かったのだ。昔のおれができたんだからいまのおれにだってできる。どんな困難だって平気だ。

…と、格好つけてみたけれどそれはおれの強い覚悟みたいなもので、実際は困難なんてなにもない。花として咲いていれば、誰もがみんな優しくしてくれる。愛してくれる。誰も傷つける人なんていない。誰も嫌なことをしてこない。みんなが笑い始める。ほらごらん、世界は優しく美しい。

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子宮の中へと還れ

ぼくは子宮の中にいる。

暗闇の中でプカプカと羊水に浮かんでいる。

そこにはなんの悩みも憂いもない。

ただ浮かんでいる、温かくて気持ちがいい、ただそれだけなのだ。

無なのか有なのか、自分がいるのかいないのか、それもわからない。

ぼくは何からも切り離されてなく、世界と繋がっている。

暗闇の中、自分もなく存在している。


突然、光があらわれた。わっまぶしい!


「キャッ!ちょっとあんた、ちゃんと電気つけてお風呂に入ってって言ってるじゃないの!」

女房が立っていた。

「次はあたしが入るんだから。ほらほらほら邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ッ!」

女房がURYYYYYYYYとわめいている。


なんだよもう。ぼくはこんな風に真っ暗にしてお風呂に浸かるのが好きなのに。生まれてはみたけれど、外はうるさい世界だ。それになんだか寒い。


【再掲】子宮の中へと還れ(初出2008年1月14日)

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